2012年05月14日

魅惑の言葉『金メダル』

昨日、柔道のロンドン五輪代表選手が発表されました。

当協会サポートアスリートでは、筑波大学4年女子78kg級の
緒方亜香理さんが選ばれました。おめでとうございます。

各階級の代表選手のコメントを見ました。

「金メダルを目指して頑張る。」
「出るからには金メダルを目指す。」
「金メダルしか考えていない。」
「目標は金メダルしかない。」


編集されたコメント集を見る限り、全選手のうち、‘金メダル’という
言葉を使っていなかったのは男子81kg級の中井貴裕選手のみ。
柔道は、出場=金メダルを期待される特別な競技です。
金メダル以外許されないというような空気さえ感じます。

一方で、落選した選手からは
「今は何もやりたくない。」
「しばらく柔道から離れたい。」

といった人生が終わったかのような落胆のコメント。
それぐらい賭けていたという選手の気持ちが伝わってきますが、
一方でここまで人を追い詰める五輪の圧力が恐くもあります。

このレベルの皆さんと同じステージで話しをするのはおこがましいのですが、
私も、元レスリング選手の父から、「2番からビリは一緒だ」と言われて育った
ので、1番を極めるアスリートに強く惹かれるところがあります。

ただ、やはり日本スポーツ界の勝利至上主義は行き過ぎの感があります。
アスリートのセカンドキャリア研究でも、この問題は頻繁に取り上げられています。
このコメントをこども達や、スポーツをしている子供の親が聞いたら、
今後のスポーツキャリアにどういう影響があるんだろうとふと思ってしまいました。

ただ、自分のアナウンサーとしての仕事を振り返ると、五輪取材では
「金メダル」「メダル」を無理やりにでも言わせようとして来たことも事実です。
ある五輪選手に、「なぜマスコミは、五輪と言えばメダル・メダルしか言えないの?」
と指摘されたときに「はっ」とした事を今も鮮明に覚えています。

もちろんメダルを獲得してほしい。景気よく金メダルを宣言してほしい。

しかし、アスリートもメディアも‘金メダル’という言葉に依存してはいけないし、
‘金メダル’という魅惑の言葉に振り回されてもいけないのだと思います。
五輪開催までにメディア・トレーニングの予定がいくつかありますが、
メディア・トレーニングを通じて、アスリートは五輪を通じて社会に何を伝えること
ができるのか、社会は何を求めているのか一緒に考えるきっかけにしていきたい
と思っています。

posted by NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 at 07:00| Comment(0) | スポーツ

2012年05月07日

松井秀喜とダルビッシュ有の違い

やっと松井秀喜選手の所属チームが決まりました。
当日、ニュース担当だったのでそのニュースも読んだのですが、
以前「松井TODAY」というコーナーを担当していたということも
あり、特別な気持ちになりました。

さて、タイトルの「松井秀喜とダルビッシュ有の違い」ですが、
皆さんは何だと思われますか?
年齢もチームも守備位置も全部違うわけですが、今回取り上げたい
のは記者会見です。

入団会見の時から、ダルビッシュ選手の目線が気になっていました。
例えばこれ。

http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=21062741

逐一、通訳の方に顔を向けています。
この映像は通訳の方も含めた画角で撮影しているので、そこまで違和感は
ありませんが、テレビ局のほとんどはダルビッシュ選手のワンショットです。
そうなると画面いっぱいのダルビッシュ選手が頻繁に横を向くのが気になります。
テレビを見ている人には通訳の方が見えないので余計不思議に映ります。

こちらは松井選手
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00994/v00034/v0000000000000001105/

いい映像が見つけられなくて、正面ではないのですが、
通訳の方には目をやらず、記者・カメラの方向を向いていることがわかります。
まるで、通訳など存在しないかのようです(笑)

まだ渡米して間もなく、つい気の知れた通訳のほうに目を向けてしまう
ダルビッシュ選手の様子がどこか愛おしく、通訳を見て見ぬ振りの松井選手が
どこかそっけなく見える・・という気もしてしまうのですが、
大事なことは、話す相手・伝える相手は、通訳ではなくテレビの向こうのファン
ということです。もちろん目の前にいる記者でもカメラマンでもないわけですが、
カメラの向こうにいるファンを意識するとおのずとカメラの方向に目を向ける必要
があります。

また、多くの場合、ダルビッシュ選手は机に肘・腕を乗せ手を組んでいます。
添付の映像は通訳の方もそっくり同じ体制です。
松井選手の手は机の下です。
私も何度かディレクターから注意を受けたことがありますが、
目の前に机があるとつい肘を置いてしまいます。
置くとなぜか心も体制も安定します。人を前に手を組んだり、腕を組むのは
心理学では‘自己防衛’という意味があるようですが、やはりあまり感じの良い
スタイルではありません。
日本人選手以外の会見もいくつか見ましたが、肘をついている選手はほとんど
いません。ただ、重要な話をする時に、「いや、実はね」と肘をついて体を前に出し
手を組み合わせて話すということは視覚的に一定の効果はあると思います。

目から入ってくる情報に、人は影響を受け易いものです。
少しでも正確にメッセージを伝えるには、どういう見せ方がいいのか、
これもメディア・トレニングの重要な要素です。


アスリート・メディア・トレーニング・ダルビッシュ有・松井秀喜・記者会見
インタビュー・メジャーリーグ・レイズ・レンジャーズ・野球
posted by NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 at 07:00| Comment(0) | スポーツ

2012年04月23日

研究者のメディア・トレーニング

私は、一度社会に出て、スポーツ報道を経験し、その後筑波大学の
社会人大学院に入学しました。学問の世界、用語は独特で、
スポーツに携わる仕事をしていたにも関わらず、入学当初は、スポーツに関する
書籍を読んでも何が何やらチンプンカンプンでした。

原発問題でも、いくつかの批判の中で、専門家のコメントや会見がわかりづらい
という意見を耳にしました。

専門用語が多い、声が聞き取りにくい・・・

研究者の説明がわかりづらく、混乱を招いたわけで、

悪気はないだろうし、喋り手じゃなくて研究者なんだから仕方ない・・

ではすみません。

海外では、研究者がメディアや一般市民と上手にコミュニケーションを取ることで
研究者・学術界だけでなく社会全体にメリットがあるという考えの元、
このような取り組みが行われています。

研究者のメディア・トレーニング
科学者のためのコミュニケーション・トレーニング

ポイントは、このトレーニングが、‘課せられた’のではなく、
‘副賞’=ご褒美として提供されているということです。

日本のスポーツ界にもメディア・トレーニングが導入され始めていますが、
競技団体やチームからの指示で強制的に受ける・・という印象が否めません。
入口は強制的であったとしても、実際トレーニングを受けることでその必要性
を理解して下さるアスリートもたくさんいらっしゃいます。
ただ、アスリートの皆さん自らが‘受けたい’と思うようなトレーニングを開発する
ことが当協会の役割だと考えています。
また、アスリートの皆さんに、メディア・トレーニングを受けることで得られる
恩恵を理解していただき、情報発信の重要性を認識してもらえるよう、
これからもメディア・トレーニングに関する情報を発信していきたいと思います。

NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会の理事は、全員修士以上の学位を
持っています。私立大学で教える現役バリバリの研究者もいれば、
一般の職業に就いている人間もいますが、
根本的には、皆、研究者としての一面を持ち、かつメディア取材を受ける可能性の
ある存在です。我々自身も、日々トレーニングを怠らないよう努めたいと思います。




posted by NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 at 07:00| Comment(0) | スポーツ